恵み

人が罪を犯した時点で人類の歴史が終わっても、おかしくはありませんでした。でも聖書には違う筋書きがありました。アダムとエバがもらったのはレッドカードだけではなかったのです。神は同時に、罪の問題を解決する、という約束も与えてくださいました。この約束を恵みの約束と言います。

確かに、楽園の外の世界は厳しいです。つらいです。問題だらけです。でもこの約束のゆえに、希望もあるのです。神と顔と顔を合わせて交わることのできた楽園とは比べ物になりませんが、神を求めれば見つかる、神を知ることはできる、そんな世界に私たちは生きているのです。

でも一体、罪の問題を解決するという神の約束は、どのように果たされるのでしょうか。

第5回:恵み

はじめの質問

  1. あなたの知る中で、いちばん悪い人は誰でしょう。その人はどのような報いを受けるべきだと思いますか。
  2. 「恵み」と聞くと何を思い浮かべますか。

前回、最初の人間アダムとエバが罪を犯したところを読みました。この出来事は一般に「人の堕落」と呼ばれています。聖書は、罪を神との関係において理解していました。また、人が神のことばや命令を大事にするかどうかが、罪と深く関わっていました。罪とは、一つひとつの行動というよりも心の問題であり、「善悪を知る」(決定する)神の権威を拒否して、自分で善悪を決めたいと願う心が「罪」なのでしたね。聖書によれば、このような心が、今の人間のデフォルトです。人がこのような心を持っていることが、あらゆる悪の根源なのです。

神がその場で「死」をもって罪を罰しても、それはまったく正しいことでした。聖書は「罪の報酬は死です」と教えています(新約聖書・ローマ人への手紙6章23節)。確かに、アダムとエバは今や「死ぬ身」となりました。楽園で持たれていた「内の交わり」から追い出され、彼らはある意味で、「霊的に」死にました。けれどもアダムとエバは神によって生かされ続けたのです。前回、堕落後に神が「いのちの木」へのアクセスを禁じたことは、神に逆らい、神にさばかれる不幸な状態で生き続けることがないようにという、神の優しさのためでもあったと見ました。このような優しさは、人が受けるに値しない神の親切です。今日見ていく聖書の箇所でも、受けるに値しない神の親切が被造物に与えられます。

神であるは蛇に言われた。
「おまえは、このようなことをしたので、
どんな家畜よりも、
どんな野の生き物よりものろわれる。
おまえは腹這いで動き回り、
一生、ちりを食べることになる。
わたしは敵意を、おまえと女の間に、
おまえの子孫と女の子孫の間に置く。
彼はおまえの頭を打ち、
おまえは彼のかかとを打つ。」
女にはこう言われた。
「わたしは、あなたの苦しみとうめきを
大いに増す。
あなたは苦しんで子を産む。
また、あなたは夫を恋い慕うが、
彼はあなたを支配することになる。」
また、人に言われた。
「あなたが妻の声に聞き従い、 
食べてはならないと 
わたしが命じておいた木から食べたので、 
大地は、あなたのゆえにのろわれる。 
あなたは一生の間、 
苦しんでそこから食を得ることになる。
大地は、あなたに対して茨とあざみを生えさせ、 
あなたは野の草を食べる。
あなたは、顔に汗を流して糧を得、 
ついにはその大地に帰る。 
あなたはそこから取られたのだから。 
あなたは土のちりだから、 
土のちりに帰るのだ。」
人は妻の名をエバ1と呼んだ。彼女が、生きるものすべての母だからであった。
神であるは、アダムとその妻のために、皮の衣を作って彼らに着せられた。

旧約聖書・創世記3章14-21節
  • この箇所で、男と女に対する「受けるに値しない神の親切」は見て取れますか。
  • 神の正義と神のあわれみ。ここまで読んできて何か問題はあるでしょうか。

聖書の中で「恵み」という語は色々な意味で使われています。中でもいちばん重要なのが、「受けるに値しない神の親切」です。

聖書を読み進めると、神はご自分を次のように描写して「自己紹介」しています。

2は、あわれみ深く、情け深い神。怒るのに遅く、恵みとまことに富み、恵みを千代まで保ち、咎と背きと罪を赦す。しかし、罰すべき者を必ず罰して、父の咎を子に、さらに子の子に、三代、四代に報いる者である。

旧約聖書・出エジプト記34章6-7節
  • 神の自己紹介で何か驚いたところはありましたか。

おわりの質問

  1. 神が咎と背きと罪を赦すことについて、どう感じますか。
  2. 自分の罪が赦されるかもしれないことについては、どう感じますか。

神は、アダムとエバにいのちの希望を与えられましたね。彼らの裸を犠牲の衣でおおい、エバの子孫が蛇の頭を打つと約束されたのです。これは、神がいつか、必ずや罪の問題を解決するという、恵みの約束です。

次回、この約束が歴史の中でどのように成就されたか、見ていきましょう!

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脚注

[1] エバは「命を与える者」を意味するヘブル語に音が似ています。

[2] 太字の「」は、原文で神の名「わたしはある」というヘブル語が書かれているところです。

聖書 新改訳2017©新日本聖書刊行会

冊子説明動画⑤恵み

この動画では冊子5ページ目の内容を掘り下げます。「内」を明るく、「外」を暗く描いている冊子のモチーフ、神の恵み、そして、今私たちの生きている世界が、「外」ではあっても希望のある世界であることを見ていきます。